戦前・戦後を超えて歴史を伝える無二の存在
今年は戦後80年。戦争により多大な犠牲を出した責任は、暴走した軍部にあるとされ、昭和天皇については「戦争に主体的には関与しなかった」「最後まで日米戦争を回避しようとしていた」と長らく理解されてきた。だが、近年は「天皇を好戦的な指導者とみなすのは間違いだが、最終的には天皇は開戦を決断した」「『統帥権』は天皇にあり、すべての重要な政策決定の場にいた」(明治大学教授の山田朗氏)といった指摘もなされている。
「天皇と戦争の関わり」をどう考えればよいのか。「天皇」とはいかなる存在なのか。「今後の皇室」はどうあるべきなのか。昭和50年代生まれの4人の気鋭の論者が徹底討論した。

先崎 言論界では「若手」と評されることもある我々4人は、いずれも昭和生まれで“昭和の時代の空気”を体感しています。ところが、大学で講義をしていると、1945年8月15日が終戦の日だと知っている学生は2割ほど。それほど大きな歴史の断絶がある。
「天皇の戦争責任」に関して意見は正反対でも、かつてなら、この問いが成り立つ時代状況を皆が共有していた。議論の初めから恐縮ですが、今日、議論の前提となる時代感覚が失われているなかで「戦争」や「天皇」を論じても言葉だけが独り歩きしてしまうことを危惧します。
1 昭和天皇と戦争
與那覇 それこそ一昨年はSNSでバーベンハイマー騒動(米映画「バービー」と「オッペンハイマー」のタイトルを組み合わせた造語で、原爆を軽くあしらう投稿画像が物議を醸した)がありました。米国人と日本人では「原爆観がこんなに違う」と改めて可視化され、お説教を始める有識者もメディアに出てきた。
でもこの時起きたのは、「キノコ雲を茶化す画像はひどい」といった表層的な議論のみ。過去を“ネタ”に使っているだけで、騒ぐ人も実は今しか見ていませんでした。
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