長編第一作が映画化。原作と映画に込めた故郷・長崎への思い
(聞き手・構成 大野和基)
イギリスのノーベル賞作家、カズオ・イシグロ氏が1982年に発表した長編第一作『遠い山なみの光』(ハヤカワepi文庫)が石川慶監督によって映画化された。
日本人の両親を持ち、5歳まで長崎で暮らした後、両親とともにイギリスに渡ったイシグロ氏に映画化された作品について、また故国・日本への思いを訊いた。
――『遠い山なみの光』が発表されてから40年以上が経ちました。映画化を機にこの作品と向き合い、どんなことを思いましたか?
イシグロ 実はこの小説を刊行してから1年後には早くも最初の映画化のオファーがあったんです。それ以来、常に映画化の話が出ては消えてきました。

2022年にプロデューサーの石黒裕之さんと監督の石川慶さんからもらった映画化のオファーは四度目でした。ですから、映画化自体は新しいアイデアではありませんでしたが、この小説がどんな映画になるかについての私の考えは発表した頃とはかなり大きく変わっていました。世界と映画産業が変わり、長い歳月が経っていたからです。
映画は1950年代、長崎から始まる。二郎(松下洸平)と結婚した主人公・悦子(広瀬すず)は初めての子供を身ごもっていた。ある日、悦子は近所に住む佐知子(二階堂ふみ)と出会う。佐知子は夫を失い、小学生の娘・万里子を1人で育てていた。
悦子は長女の景子を出産した後、長崎を訪れたイギリス人男性と出会い、彼とともに景子を連れて渡英する。
1980年代、悦子は次女のニキ(カミラ・アイコ)に長崎での日々を語り始める。敗戦と原爆に打ちひしがれた長崎の人々はひたむきに自分の人生を取り戻そうとしていた。
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