トッド　2024年、創立150周年を迎えた広島大学で講演をする予定だったのですが、急病で訪日できなくなりました。別の予定があったのに佐藤さんが急遽、その代役を務め、しかも「西洋の道徳的危機に直面する今日の日本」という同じタイトルでご講演くださいました。本日は、まずその御礼を直接、申し上げたい。

　以前にお会いして信頼関係があったので、佐藤さんに代役を務めていただくのは大変ありがたかったのですが、それ以上に、日本人である佐藤さんとフランス人である私が国を越えたチームを組んで「知的共犯」を企てているようで、大変うれしく思っています。

　佐藤　私も同じ気持ちで、さらに私は二つの得をしました。

　一つめは、『西洋の敗北』を発売前に読むことができ、特別な準備はせずに、本書の内容を紹介するだけで講演の代役を果たせたことです。

　二つめは、私は万年筆の収集家なのですが、トッドさんへのお土産になるはずだった高級万年筆をいただいたことです。さらに、これを機会に広島大学の特別招聘教授にもなりました。

　トッド　私も広島に行きました。ちょうど1年前に予定していた広島大学への訪問をキャンセルせざるを得なかったのは、私にとって大変な不幸でした。ですから、今回、広島訪問を実現できたのは本当にうれしいことでした。そして私も広島大学の越智光夫学長から、その万年筆をいただきました（笑）。

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