スポーツ界のリーダーが組織論を語り合う
(取材・構成 二宮寿朗・スポーツライター)
南場 大阪のご出身なのに、巨人ファンだったそうですね。
宮本 僕が住んでいた地域は、阪神の試合を中継しているサンテレビの映りが悪いんですよ。それで、映りのいい読売テレビの巨人戦の中継を見ていたら、巨人ファンになっていました。でも、阪神が優勝した1985年は、さすがに阪神を応援しましたね。
南場 私が生まれ育った新潟は「巨人ファン」か「アンチ巨人」しかいなかった。でもそれって、みんなが巨人戦を見ているということ。テレビ中継の影響力が大きかったんですよね。それでも宮本さんは野球の道には進まなかった。
宮本 元々はソフトボールをやっていたんですが、小5からサッカーをやりはじめたら、面白くなってしまって。
南場 そうだったんですね。米国では、野球、アメリカンフットボール、バスケットボールと、様々なスポーツを若いうちに一通り体験してから専門を選びます。一方で南米のように幼い時からサッカーだけに打ち込む地域もある。選手になるには、どちらのルートが良いと思います?
宮本 いろんなスポーツの動きを体験しておいたほうが良い気がします。たとえばサッカーのヘディングをするにしても、野球やソフトボールの経験があると落下地点を予測しやすくなるんですよ。
南場 なるほど。DeNAでも子供向けの陸上のアカデミーなどをやっていますが、そこから他の競技で活躍する選手も、出てくるかもしれませんね。
宮本 日本サッカー協会(JFA)でも、「マルチスポーツ」に取り組んでいて、サッカー、野球、ダンスなどいろんなジャンルに触れるイベントを実際にやっています。少子化の時代に「サッカーだけやってください」と押し付けるのは難しい。ほかの競技でもスポーツに親しんでもらうことは、最終的にはサッカー界のためにも活きてくると思うので。

IT大手・DeNAの創業者で、横浜DeNAベイスターズオーナーの南場智子氏(63)は、地域密着のファンサービスで球団の黒字化に成功、人気球団に育て上げた。バスケットボールとサッカーのプロチームも運営する「DeNAスポーツグループ」を展開する。
サッカー日本代表のキャプテンとして活躍した宮本恒靖氏(48)は、2024年からワールドカップ出場経験者として初めてJFA会長を務める。日本代表が出場を決めている北中米ワールドカップ開幕も26年6月に迫る。
スポーツ界をリードする2人が、リーダーのあり方からスポーツの可能性までを語り合った。
野球のルールは“複雑”
南場 プロバスケ・Bリーグに所属する川崎ブレイブサンダースの経営もしていますが、バスケやサッカーって、野球に比べると絶対的にルールが分かりやすいんですよね。
宮本 フットボールは19世紀に、貴族階級のラグビーと労働者を含めた幅広い人が楽しむサッカーに分かれたという歴史的な経緯があります。さらに1863年設立のイングランドサッカー協会が地域ごとに独自で作っていたルールを分かりやすく統一して、世界中に広めていったんです。
南場 そうだったんですね。野球は本当に複雑ですよ。ハーバード大時代に欧州から来たクラスメイトと一緒にレッドソックスの試合を見に行くことになって、ランチを食べながら事前にルールを一生懸命に説明したんですけど、全然理解してもらえませんでした。

宮本 野球に詳しくない人からしたら“どうして振り逃げになるの?”って、なりますもんね。
南場 もうね、振り逃げなんて高度なところまで、全然いかない(笑)。
宮本 日本のプロ野球とJリーグの違いで言うと、プロ野球は12球団によるペナントレースですが、JリーグはJ1、J2、J3の60クラブによる昇格降格制。この違いは、球団やクラブの経営の安定に大きく影響しますよね。

南場 DeNAはSC相模原の運営に携わっていますが、2021年に株式を取得する交渉をしている最中に、J2からJ3に降格しちゃった。そのまま現在もJ3。昇格するには投資しなければいけないんですが、どれだけ投資すれば昇格できるか判断するのは難しい。
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