いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。

2025年2月28日、我々は前代未聞の“ショー”――ひとつの文明のルールが崩壊する場に立ち会いました。米ホワイトハウスでのトランプ大統領&ヴァンス副大統領とゼレンスキー大統領との首脳会談の決裂です。
これは何を意味するのか。ウクライナ戦争での「西洋の敗北」が明らかになるなかで「西洋」が分裂し始めたのです。
大きな子(ロシア)にやられた子(米国)がより小さな子(ウクライナ)をいじめている。共にロシアと対峙してきた米国、欧州、ウクライナの三者は、「敗北の責任」を互いになすりつけ合っています。
2025年8月15日にアラスカでトランプとプーチンの会談が行なわれた3日後の18日には、ホワイトハウスでトランプとゼレンスキーの会談が行なわれ、その後、英仏独伊とEU、NATOの欧州首脳も加わりましたが、これも見るに堪えない醜悪な“ショー”でした。米露首脳会談は、ロシアとプーチンを「悪魔」呼ばわりしたバイデン政権と違って、米国がロシアを交渉相手と見なした点で重要な政策転換を意味しますが、敗者である米国があたかも仲裁者のように振舞い、「西洋の敗北」の責任を生贄(スケープゴート)としての欧州に押し付けているのです。トランプはワシントンに馳せ参じた欧州の首脳たちを子供扱いするように褒め称えました。トランプだけが机の前(上座)に座り、欧州の首脳たちがトランプを囲むように机のない椅子に扇状に座る写真をホワイトハウスがXに投稿にしたことが物議を醸しています。欧州の首脳たちは、(ロシアの言うことに耳をかさない)その「無能さ」と(トランプに対する)「卑屈さ」において軽蔑に値しますが、それ以上に、ロシア人に屈辱を味わわされた米国人が心理的代償として欧州人を侮辱しているのです。
もともとウクライナは、自力ではロシアと戦えませんでした。2022年2月24日のウクライナ戦争の開始以降、さらに遡れば、2014年の西側の支援を受けたマイダン革命――プーチンに言わせれば、合法的に選ばれた大統領が暴力で非合法的に追放されたクーデター――以降、ウクライナ軍は、長年にわたる米英の支援によって、ロシアが脅威に感じるほど増強されてきたのです。プーチンが「特別軍事作戦」を決断したのは、これに対応するためでした。
ウクライナは、米国の援助なしに戦争は継続できない。支援を受けてもロシアには勝てないことが明らかになった今、資金や武器のすべてを他国に頼ってきたウクライナに停戦・和平案を受け入れさせることは、理に適っています。しかし、これほど野蛮ではないやり方があったはずです。
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