「オヤジとおふくろ」復活の原点にあった、小学生の私が母に宛てた手紙

vol.138

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ライフ 教育

「文藝春秋」の編集者が明かす、電子版限定の“ここだけの話”

「子供としてはものスゴくつらいことです」

 今年2月に母の家に行った際、幼少期のアルバムの中から一枚の手紙が出てきました。A4のルーズリーフに殴り書きされたその手紙は、私が小学生高学年くらいの頃に母に宛てて書いたものでした。

「母さんへ

最近、母さんが仕事から帰ってくると、母さんはすごく不機嫌です。仕事のつかれがあるということはスゴく分かります。でも、せっかくわたしと母さんと○○(姉)が3人そろう夜なのに、母さんが不機嫌だとこっちもイライラしてきます。子供が親の機嫌をうかがって話したり、行動するのは子供としてはものスゴくつらいことです」

 この手紙を書いたことを私はまったく覚えていませんでしたが、派手な母娘喧嘩のあとに勢いで書いたのでしょう。このあとも、母への不満が無駄に力強く汚い文字で、長々と続いていました。

 当時、我が家は父が自営業で帰りが遅く、母もフルタイムで働きに出ていました。家事と仕事の両立は相当な負担だったはずで、その大変さは自分が働き出した今になってようやく身にしみて分かります。そんななかでも毎日ごはんを作ってくれていたことや、夜遅くに洗濯物を畳んでいた姿が思い出され、無自覚な私はその奮闘に気づきもしないまま苛立ちをぶつけていたのかと、今さらながらヒリヒリと胸が痛みました。

長寿連載が復活した理由

「オヤジとおふくろ」特別復活の企画を考えたのはこの時でした。「オヤジとおふくろ」は昭和59年から40年続いた小誌の長寿連載で、著名人の方々にお父様やお母様についての短いエッセイを綴っていただいていました。2025年5月号をもって連載は最終回をむかえましたが、読者の方からも惜しむ声をいただきました。改めてこれまでのエッセイを読んでいると、親について語ることは、楽しい思い出を振り返ることでもあれば、自分の本音や目を背けたくなるようなほろ苦い過去にも向き合うことなのだと気づかされます。

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