月刊誌「文藝春秋」の編集者たちが明かす、電子版限定の“ここだけの話”
今でもたまに読み返す、「プロ野球全記録1991年版」(実業之日本社)という本が、実家の本棚に鎮座しています。ボロボロになったページをめくって奥付を見ると、1991年5月5日の発行。当時6歳だった僕は、初めて買った「名鑑」なるものを、来る日も来る日も読み返していました。「記録の神様」と呼ばれた宇佐美徹也さん(元報知新聞記録部長)が監修したこのシリーズは、データに加えて、選手にまつわる一行情報も豊富。なおかつ歴代記録の解説もあり、僕を名鑑小僧にするには十分すぎる魅力的な一冊でした。

四半世紀後、僕は「Number」の編集者となり、何冊かの名鑑を世に送り出しました。「プロ野球全記録」は、まさに名鑑編集者の原点と言えます。
選手名鑑の面白さとは何か。人によって“刺さる”ポイントは違うでしょうが、個人的には、選手それぞれのパーソナリティを紹介する一行情報がとても好きです。
データや成績だけでなく、昨シーズンのあのプレーが話題になったとか、プレースタイルにこんな特徴があるとか、はたまた誰と仲がいいとか、どんな食べ物が好きか……こういった情報が入ることで、憧れの選手たちがひとりの人物として立体的な存在になっていきます。
もう一つ、名鑑を作るうえで大事なことがあります。
それは、情報がポジティブであるということ。大抵の名鑑はシーズン前、あるいは大会前に出るので、ネガティブなことはあまり書かれず、希望に満ち溢れた内容になっています。来る本番を前に、読者がワクワクできることが何よりも大切だからです。読者がスポーツを楽しむための最良の副読本、それが名鑑の存在意義だと思っています。
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