いま知っておくべき論点を、専門家がコンパクトに解説する「文藝春秋オピニオン 2026年の論点100」。この人気ムックの記事を「文藝春秋PLUS」でも紹介します。
アメリカとロシアの戦略核弾頭を1550個に制限した核軍縮条約「新START」の失効期限が2026年2月5日に迫っている。
そんななか、ロシアのプーチン大統領は、2025年9月22日、失効後1年間順守することを提案し、アメリカのトランプ大統領に対して同様の措置を取るよう呼びかけた。同時に、プーチン氏は「ロシアは脅威に軍事手段によって対応する能力がある。その一例が、地上配備型中距離・短距離ミサイルの配備に関する自主的制限の放棄だ」として、射程500~5500kmのミサイル開発・配備を強調した。
では、プーチン氏のいう「軍事手段」とは具体的には何か。
そのひとつは、ロシアの同盟国であるベラルーシに建設された基地。この基地に射程3000km以上とされる「オレシュニク中距離弾道ミサイル」が配備されたら、米国やカナダには届かないが、NATO(北大西洋条約機構)に加盟している欧州諸国はほぼ射程内となりうる。
一方、ドイツやオランダなどNATO欧州諸国の一部は抑止手段としてアメリカと「核共有政策」をとっている。これはアメリカが同盟国の施設に核兵器を保管・管理・警備し、NATOが有事で核使用を決定すると、アメリカが同盟国に核兵器を提供し、同盟国の戦闘機などで運用するというもの。当然、アメリカが核兵器を提供しなければ使用することはできない。
モスクワも射程圏内
こうしたなか、フランスのマクロン大統領は2025年3月、フランスの核抑止力を欧州大陸に拡げることを検討すると表明した。フランスは、アメリカ、ロシア、イギリス、中国とともに核拡散防止条約(NPT)によって合法的に核兵器を保有できる国で、核ミサイルを発射する「ル・トリオンファン級原子力潜水艦」を4隻持っている。搭載されるM51・2戦略核弾道ミサイルの最大射程は6000km以上とも1万kmともされている。つまり標的から数千km離れ、海中に隠れたままミサイルを放つことができる“見えない抑止”ということになる。
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