ノンフィクション作家・探検家の角幡唯介さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。
以前、沢木耕太郎さんと対談したとき、意識する書き手の1人に本多勝一の名をあげていた。沢木さんの作風と結びつかず意外な気がしたが、もし本多勝一という人がいなかったら日本のノンフィクション作家は事実に対してもっとルーズになっていたと思う、と話しており、なるほどと頷いた。事実の厳密性で彼の目を意識することで、沢木さんは自分の作品の完成度を吟味していたのだ。
私も若い頃、本多勝一には強烈な影響を受けた。私は大学探検部に入ったことで登山や冒険の世界に足を踏みいれたが、じつは日本最初の探検部を京都大学に創設したのは、本多だ。彼は優れた記者だっただけではなく、もともと今西錦司の系譜をひく登山家、探検家でもあり、『冒険と日本人』などで明晰な冒険論、登山論を展開し、日本の山男、冒険野郎に圧倒的な影響力をおよぼしてきたのだ。まあ40歳以上のまともな登山家、冒険家で本多の本を読んでいない者など、まずいない。近代登山とは、探検とは、冒険とは? そうしたことは本多勝一の本を読まないとわからないのである。
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source : 文藝春秋 2020年1月号