私は幼少期からの昆虫マニアだ。2002年に入学した岡山大学では、社会性を持つ昆虫であるシロアリに惹かれた。以来、私は10年以上にわたってシロアリ研究に取り組んできた。卵6000個の観察、9171匹の雌雄判別――こうしたアナログな研究の積み重ねが、コメの安定供給を守るためのAI開発にまさかつながるとは思わなかった。

私が携わったのは、農研機構が2022年にリリースした「イネウンカAI自動カウントシステム」の開発だ。これに画像データを読み込むと、イネウンカ類と呼ばれる稲の害虫三種(トビイロウンカ、セジロウンカ、ヒメトビウンカ)がそれぞれ検出され、さらにそれぞれの種の成虫と幼虫、翅(はね)の短長、雄と雌など特徴に応じて18のカテゴリーに分類され、個体数がカウントされる。読み込みからカウントまでにかかる時間は約5分。識別精度は90%以上に達している。2025年には国際学術誌のサイエンティフィック・リポーツに掲載された。

農研機構がAIシステムの開発に着手したのは、稲作の宿敵と言うべきイネウンカ類の大発生防止に役立てるためだった。イネウンカ類は成虫でも体長5ミリほどの昆虫だが、大発生すると「坪枯れ」の名で知られる坪単位の枯死現象を引き起こし、最悪の場合、水田内の稲が全滅する。また、縞葉枯病をはじめとする恐ろしい植物病原ウイルスの媒介者でもある。古くは、享保の大飢饉の一因がイネウンカ類だと言われており、近年でも数十億円規模の被害を稲作にもたらしてきた。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2026年5月号

