パランティアの「戦争OS」が軍事革命を起こした
「(イランの)指導者たちは全員消えた。次の指導者たちも全員消えた。さらにその次の指導者たちもほとんど消えた。そして今や指導者になりたいと思う者は誰もいない。我々は困っている。彼らと話したいのに話す相手がいない」
3月20日、ホワイトハウスのイベントでテレビのインタビューに答えたトランプ大統領は、アメリカがイスラエルと共に攻撃を続けるイランについてこう語った。イランの指導者たちは「消えた」のではなく、アメリカが軍事攻撃や特殊作戦で「消した」のだ。現在のトランプ政権の対外政策はこの一言に集約できる。
「Decapitation(斬首作戦)」
もともと人間の頭部を胴体から切り離す行為を指すが、軍事用語では「敵のリーダーを排除する作戦」を意味する。
アメリカは2月28日、イスラエルとの共同作戦でテヘランにいたイランの最高指導者、ハメネイ師と、シャムハニ最高指導者顧問、革命防衛隊のパクプール司令官、ナシルザデ国防軍需相、ムサビ軍参謀総長を1日のうちに「斬首」した。

イスラエルは3月17日、イラン最高安全保障委員会(SNSC)のラリジャニ事務局長を殺害したとも発表している。また、アメリカは1月にベネズエラの首都カラカスでの軍事作戦でマドゥロ大統領とその妻を拘束、拉致して米国に移送した。
魔法の力を授けた男
トランプ氏の「我々は困っている」は、米国と対立するすべての国の指導者に対する「刃向かうなら排除する」という脅しにも聞こえる。
歴史を振り返れば、諜報活動をベースにした敵国指導者の暗殺はアメリカという国の十八番である。だが、いま我々が目の当たりにしている「斬首作戦」は、かつてのそれと、精度、速度、威力において性質が異なる。

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アメリカは今や地球上のどこでも、ターゲットにした人物を意のままに排除できる。そんな「魔法の力」をトランプ政権に授けた男が3月5日、我が国の首相官邸を訪れた。日本経済新聞の「首相動静」が短く伝えている。
〈▷15時20分 米データ解析大手「パランティア・テクノロジーズ」のピーター・ティール会長らの表敬。〉
面会時間は約25分間だったが、ネット上では「2月28日のハメネイ師殺害にパランティアのサービスが使われた」との情報が飛び交い、高市早苗首相の訪米を目前に控えた3月17日の参院予算委員会では、参政党の神谷宗幣代表が「ネット上では政府が今後、同社のサービスを一気に導入するのではないかという懸念の声が上がっている」と質した。
首相は「サービスの利用については話題にしていない」とかわしたが、俄には信じ難い。
ティール氏とパランティアの概要を説明しよう。
西ドイツのフランクフルト生まれで1歳の時、アメリカに渡り、少年時代を南アフリカやナミビアで過ごしたティール氏は、「テクノ・リバタリアン(科学技術を信奉する自由主義者)」を自認する。若い頃から哲学的な思考を巡らせ、GAFAMなどシリコンバレーに集積したリベラル系のネット・ベンチャーの起業家たちとは一線を画す。スタンフォード大学では哲学を専攻し、『スタンフォード・レビュー』という保守系の大学新聞を創刊して、多文化主義やポリティカル・コレクトネスに異を唱えた。
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