モスクワ特派員の女性通訳たちのスパイ活動
「彼女を開き晒し出す彼の手の下で、ナターリヤは激しく息づき、今まで泣いていた女とは全く違う別の女に変身していった。彼女は信じられぬほど豊かで柔らかくなめらかで優しかった」。石原慎太郎の小説『日本の突然の死』の一節だ。舞台は北極海に面するソ連の港町、アルハンゲリスク。抱き合うのは、訪ソした日本の指導的人物と、彼に付けられた美貌の通訳、ナターリヤだ。彼はソ連に都合のいい人物と化していく。
本書の世界につながる。1941年夏、独ソ開戦。チャーチルはスターリンへの手厚い軍事支援を約束。英国から北極海を通ってアルハンゲリスクへ、海路で真っ先に送り込まれたのは特派員団だ。まずは国内世論を味方に付け、親ソ・ブームを起こさねば。
特派員たちが滞在場所に指定されるのは、モスクワの大ホテル、メトロポール。彼らは自由な取材を望む。が、特に劣勢時には戦況の真相を知られたくないのは万国共通。そのうえソ連には秘密も多い。スターリンの引き起こした大飢饉や大粛清。真相を隠し続けねばならぬ。

本書は、米国のジャーナリスト、エドガー・スノーのモスクワでの1942年の日記を引く。「記者たちは冬の間、何週間もホテルを離れず、秘書と新聞に頼っている。秘書は朝、朝食を注文し、記者たちの食事中に枕を整え、煙草やウォッカを買い、翻訳し、通訳をこなし、ロシア語を教え、そして時には記者とベッドを共にした」。
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