宮崎哲弥「『100万回生きたねこ』のナゾを解く とらねこはなぜ100万と1回目で死んだのか?」

鈴木 涼美 作家
エンタメ 読書

とらねこの死が意味するもの

 娘が1歳になり、本棚からしきりに絵本を持ってきては、無言で読めとせがむようになった。意味が分かっているのか絵だけ眺めているのか母親の声が心地いいのかはよくわからないが、お気に入りのものもあれば1ページですぐに飽きてしまうものもある。意外と渋いものを好むこともあり、大人からするとこれが何度も読みたい、という子どもの基準は謎だ。そもそも絵本には謎が多い。絵があるぶん、小説や評論に比べて言葉数は一般的に少なく、言語で説明される部分はものすごく限られている。

 本書は今や国内だけでなく世界にもファンが多い佐野洋子の絵本『100万回生きたねこ』の謎に、仏教思想に精通する著者ならではの補助線を使いながら迫るものである。絵本ではオスの「とらねこ」が何度も生と死を繰り返し、100万と1回目の生で最後に死ぬ。寓話的で実は結構わかりにくいこの物語の、通俗的解釈が踏み込まない謎。なぜ主人公である「とらねこ」は何度も生まれ変わることを繰り返しているのか。100万と1回目の死ではなぜもう生まれ変わらなかったのか。主人公の死で終わるこの話がハッピーエンドだと直感する人が多いのはなぜか。そしてなぜこの絵本がこんなにも色々な国で受け入れられたのか。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

18,000円一括払い・1年更新

1,500円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2026年4月号

genre : エンタメ 読書