率直にして明晰、ユーモアの向こうに愛情が見える
さらりと読めて、ときに切なく、おかしいのに涙が出る。親の介護をテーマにした本は多いが、このエッセイほど笑い、首がもげるほど頷き、最後に大泣きしたものはない。

著者・杉山響子の母は佐藤愛子。別れた夫の借金を返すため、子供を育てながらひたすら書き続け、多くの読者を獲得してきたこの大作家を、愛読者も編集者も、敬意と親しみをこめて愛子先生と呼ぶ。40年来の読者である私もそう呼んできた。
100万部超えのベストセラー『九十歳。何がめでたい』から10年。昨年102歳になった愛子先生が、アルツハイマー型認知症をわずらっていることを、本書で初めて知った。
自宅の書斎に電動ベッドを入れるとここは病院だと勘違いし、やがて監禁されているという妄想が生まれる。急に正気に返り、「ごめんね」「いつからこうなったの?」と謝る。そして「いずれこのことを書く日が来るだろうね。書けばみんな飛びつくわ」と言う。このまま時が止まってほしいと響子さんは思う。
そのとき「田畑麦彦に会いたいなぁ」と愛子先生が言う。田畑麦彦とは借金を負わせた元夫、つまり響子さんの父で、もうこの世にいない。
〈「あんなに怒ってたのに? 頭から水ぶっかけた相手なのに?」/「でもねぇ、あの人の言葉には説得力があったんだよ」/私は父を想う母を生まれて初めて見た。/これが私が本当の母と話した最後となった〉
以後、愛子先生は、いろいろなことが解らなくなっていく。
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