立命館アジア太平洋大学学長の出口治明さんが、令和に読み継ぎたい名著3冊を紹介します。
古典を入れると3冊には絞り切れないので、平成時代に出版された本の中から選んでみた。最初は、『クアトロ・ラガッツィ』。わが国が初めてグローバリゼーションの荒波に対峙した時代、広い未知の世界に船出した4人の少年たち(天正遣欧使節)がいかに健気に振舞ったか。読んでいて胸が熱くなる歴史ロマンだ。小説ではあるが、東西の史料を丁寧に渉猟して裏付けを取っており、そのことが本書に深い重みを与えている。4人の少年の運命は、そのまま日本の運命ではないか。これから、人生にチャレンジしようとする若者には、ぜひとも読んでほしい。豊かな余韻を感じさせる傑作で、高い普遍性を有しており、英訳したら世界でも広く愛読される気がする。
次は、『社会心理学講義』。タイトルからは想像できないかも知れないが、本書は最高のビジネス書の1冊だと思う。あらゆるビジネスは、人間と人間がつくる社会を相手としている。そうであれば、人間と社会の本質を丸ごと理解することが何にも増して優先されるのではないか。本書は、人間とは何か、社会とは何かという根源的な問いに真正面から切り込んだ渾身の1冊だ。常識を疑うところから全ての学問はスタートするが、考える力、問いを立てる力を鍛えるには格好の書だ。ノウハウを教える凡百のビジネス書に手を伸ばす前に、本書を熟読玩味して頭を柔らかくしてほしい。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2020年1月号