この町を背負って書店を営む意味がある
亀井 三省堂書店神田神保町本店が新装開店して1カ月あまり。訪れた方がまず驚かれるのが1階の「知の渓谷」です。私も早く、みなさんにお見せしたかった! 長谷川さんが設計された図面を最初に見た時は感動しましたし、涙ぐむ社員までいたのをよく憶えています。
長谷川 店舗の中心から壁に向かって階段状に書棚が高くなるレイアウトを思い切って提案しました。壁際に設けたロフト「世界の展望台」に登ればフロアが一望できます。実は他に無難なプランも出したのですが、「あそこに渓谷をつくりたい。この案でいこう」と言っていただけたときは嬉しかったですね。

1881年に創業した日本を代表する書店チェーン・三省堂書店が2月19日、創業の地である神保町に「神田神保町本店」をリニューアルオープンさせた。
1981年に建設された旧本店は、地上6階の売り場を誇り神保町のランドマークとして親しまれてきた。建物の老朽化を受けて〈いったん、しおりを挟みます。〉と告知し、一時閉店したのは4年前のことだった。新たなビルは13階建てのうち書店フロアは1階から3階。それより上階にはテナントが入り、売り場面積は旧本店の7割、本の在庫数は約70万冊から約50万冊に減ったものの、オープン日から多くの客が押し寄せ、本店復活が待ちわびられていたことを証明。いまも店内は、若者から中高年まで幅広い世代で1日中賑わっている。
プロジェクトを主導したのは、三省堂書店社長の亀井崇雄氏(50)。創業家に生まれ、システムエンジニアを経て2005年に入社。2020年から5代目の社長となった。その亀井社長が旗艦店の内装設計を託したのが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、ハーバード大学デザイン大学院の客員教授を歴任し、国内外の住宅を中心にキャリアを重ねてきた建築家の長谷川豪氏(48)だった。
出版不況が叫ばれる中、都心の一等地で建て替えに踏み切った狙いから、本の町・神保町と書店の未来まで新本店の一角で語り合った。

“本と目が合う”
亀井 1階正面から売り場に入ると、本に360度囲まれて「こっちに来て、私を買って」とPRされるようです。こんな体験は他ではできないと思います。
私の一番のお勧めは、2・3階の壁面にある「探求の洞窟」(下の画像)。棚の前に立つと、ぐるりと三方、本に囲まれて圧倒されます。

長谷川 探求の洞窟には、文庫や新書、コミックを並べていますが、レーベルごとに分けているので、統一感のある背表紙が綺麗ですよね。大きな書店こそ、書斎のように本に没入できる小さな空間が必要だと思ったんです。
亀井 店舗全体では、本を平積みで陳列する「平台」を減らし、できるだけ本を棚に差して、たくさんの背表紙をじっくり見ながら本を選べる贅沢な空間作りをめざしました。

長谷川 開店後の反響で嬉しかったのは、「これだけ“本と目が合う”書店は初めて」と言ってもらえたことです。今回のコンセプトは「本のランドスケープを作る」こと。書棚のレイアウトや高さを調整して、一度にたくさんの本が目に飛びこんでくるようにしました。
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