日本のインテリジェンスの実態『インテリジェンスの基礎理論』小林良樹

第154回

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

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 政府のインテリジェンス(情報収集・分析)機能の強化に向けて政治的司令塔になる「国家情報会議」と、実務を担う「国家情報局」を新設するための関連法案が4月23日、衆議院本会議で与野党の賛成多数で可決された。賛成したのは与党に加え、中道改革連合、国民民主党、参政党、チームみらいなど。中道や国民民主などはプライバシー保護や組織の政治的中立性の確保などが付帯決議に盛り込まれたことで、賛成に回った。この流れからすると参議院でも法案は可決されるだろう。

〈高市早苗首相はこれまでの審議で「より質が高く時宜にかなった情報を元に意思決定することで、危機を未然に防ぎ、国民の安全や国益を戦略的に守る取り組みを強化する」と説明した。/一方、野党からは国民のプライバシーを侵害するような情報収集への懸念や、新組織の情報活動に関する国会への報告の必要性などが繰り返し指摘された〉(4月23日「朝日新聞」デジタル版)

 殺人、強盗、放火、窃盗などの一般犯罪の捜査でも、常にプライバシーの侵害との関連で問題が生じる可能性がある。税務調査などの行政活動でもプライバシー侵害が起きることもある。インテリジェンス活動においてプライバシーの侵害が発生したならば、その都度解決していけばいい。この点においてインテリジェンス機関と他の行政機関の活動との基本的違いはないと思う。今回重要なのはインテリジェンス関連の機構再編が行われることだ。

〈法案は、事務次官級で構成する内閣情報会議を格上げし、閣僚級の国家情報会議を設置するもの。同会議が情報活動の基本方針を決定する司令塔の役割を担う。国家情報局は、「連絡調整」を行う内閣情報調査室(内調)を格上げし、各省庁の情報を効果的に集約するための「総合調整権」を付与する〉(4月3日「朝日新聞」デジタル版)

ピントのずれた議論

 一連の流れを見ると、政治家の議論が素人の域を出ていない。インテリジェンスに詳しいと自負している政治家は少なからずいるが、そのほとんどの情報源がスパイ小説やスパイ映画、あるいはインテリジェンスの現場を中途半端にしか知らない人の書いたノンフィクションだ。政治家の持つ偏見を正すためにも閣僚級の国家情報会議を作ることには意味がある。閣僚級の政治家のリアルなインテリジェンスに対する理解が深まることは国益に貢献する。

 4月2日の衆院でもピントのずれた議論が行われた。

〈後藤氏(中道改革連合の後藤祐一衆院議員)は、「国家安全保障会議」など政府の政策部門の意向を前に、国家情報局の業務がゆがめられやすくならないかと懸念を示した。首相は、それぞれが干渉しすぎないことが重要とし、「政策部門への配慮で報告すべき情報が報告されないことはあってはならない」と述べた〉(同前)

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source : 文藝春秋 2026年7月号

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