6月16日、日経平均株価が一時7万円を超えた。史上初の出来事だった。
〈前日に大台まで700円ほどに迫った16日の東京株式市場は、静かに始まった。午前の取引は前日より83円安で終えた。/だが、午後の取引が始まると、足早に上げ幅を広げる。午後0時45分ごろ、一時7万0020円の史上最高値をつけた。/決め手は、場が休止していた間に、日本銀行が政策金利を0.75%から1.0%に引き上げると公表したことだ。利上げは一般的に景気を冷まし、株安の材料になりやすい。だが、今回は株価の追い風となった〉(6月16日「朝日新聞」デジタル版)
しかし、大量のマネーがながれるのは特定の銘柄だけだ。
〈日経平均が6万円を超えてからわずか1カ月半余りでの7万円への到達。大量のマネーが、AI・半導体銘柄に向かっている。これらは日経平均への影響が大きい「値がさ株」と呼ばれる。/代表格の半導体メモリー大手のキオクシアホールディングス(HD)は6月12日、時価総額で国内上場企業の1位になった。2024年12月の上場からわずか1年半でトヨタ自動車を抜き、トップに登りつめた。/キオクシアHDは元々東芝のメモリー事業。分社後は巨額の赤字に苦しんだが、AIブームの追い風に乗って、25年3月期からは2年連続で最高益を更新している。/ソフトバンクグループ(SBG)も1日に時価総額で国内上場企業1位に一時浮上し、市場での存在感を高めている〉(同前)
日経平均が上昇しても株を持たない国民には関係ない。評者は、マルクスの『資本論』の影響を強く受けているので、株式は擬制資本(fiktives Kapital)だと考えている。産業資本でも商業資本でも、商品やサービスを作るとか動かすという運動が資本の特徴だ。しかし、株のように持つだけで利潤が得られるというのは本来の資本のあり方ではない。運動する資本の利潤を横取りするのが擬制資本である。もっともフィクション(擬制、架空)といっても、株が価値を生むという物語を多くの人々が信じれば、現実になる。資本主義が発達すると資本が過剰になる。産業資本や商業資本に投資しても大きな利潤が期待出来ないとなれば、持っているだけで利潤が得られると期待される株、金地金、ビットコインなどにマネーが流れていくのだ。
現代の大地主
土地も擬制資本としての機能を果たす。土地から生み出されるのが地代(レント)だ。この点に着目して現代資本主義を分析しているのが斎藤幸平氏(東京大学大学院准教授)である。斎藤氏は、2020年に『人新世の「資本論」』を上梓し、環境の観点からマルクスの思想を再編し、論壇に衝撃を与えた。人新世とは、人類の経済活動が地球システムを破壊し得る時代を指す。同書による問題提起から6年を経て、斎藤氏は地球環境破壊が臨界点を超えつつあることをリアルに認識し、本書『人新世の「黙示録」』において、強権を備えた国家による資本の抑制が不可欠との結論に至った。

興味深いのが『資本論 第三巻』の地代(レント)論を理論的に発展させ、現在の巨大プラットフォーマーが抱える構造的問題を解明した点だ。説得力に富む優れた現代資本主義分析だ。
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