トランプ大統領の世界観とは何か『ウェストミンスター信仰基準』日本基督改革派教会大会出版委員会編

第153回

佐藤 優 作家・元外務省主任分析官

NEW

エンタメ 読書

 2026年4月末現在、イラン危機が大規模な戦争に発展する危険性が依然として消えていない。

〈米国とイランによる戦闘終結に向け、(4月)11日に仲介国パキスタンの首都イスラマバードで始まった協議で、バンス米副大統領は12日、「合意に至らなかった」と述べ、帰国の途についた。協議は未明まで「21時間」に及んだが、米側が求めた核開発の停止をイランが拒んだと説明した。/イランのタスニム通信によると、イラン外務省報道官は「いくつもの論点で理解に達した」が、「重要な2〜3の事項では意見の隔たりが残っている」とし、ホルムズ海峡の開放を巡って立場の違いがあると例示した。同通信によれば、イランの核開発についても相違があるという。/一方で、「外交に終わりはない」として、今後も協議を続ける可能性を示唆した〉(4月12日「朝日新聞」デジタル版)

 日本にとってエネルギー安全保障の生命線であるホルムズ海峡は現状のままになる。すなわち、米軍とイラン革命防衛隊の間でいつ武力衝突が発生してもおかしくない不安定な状態が続くということだ。

 2月28日に米・イスラエル軍がイランを攻撃し、アリ・ハメネイ最高指導者らイスラム政権の幹部を殺害した後、イラン危機を巡るトランプ米大統領の振幅が、かつてなく大きくなっている。その原因は、恐らく、トランプ氏の内面の変化に関係していると評者は見ている。ここで重要なのは、トランプ氏の世界観、すなわち内在的論理が何であると推定するかだ。それによって事態の見え方も、今後の予測も大きく異なってくる。

 第一は、トランプ氏が、刺激に対する反応という因果モデルで動いているという考え方だ。フランスの歴史人口学者で家族人類学者エマニュエル・トッド氏が説く、トランプ氏とそれを支持する米政府首脳部は宗教ゼロの人間たちで、権力欲、征服欲、ナルシシズム、破壊衝動だけで動いていると解釈するのがその典型だ。

〈――米国のイラン攻撃は、世界をどこに導くのでしょう。

(トッド氏)「この戦争の根本には、こちらも昨年2月に話したように米国社会の崩壊、具体的には『宗教ゼロ』の状態があります。かつて社会を統合していた道徳的・精神的な規律や価値観が失われ、退廃や空虚さの中で、まるで破壊や殺戮(さつりく)そのものを楽しむかのような『虚無主義(ニヒリズム)』が広がっています。これはイスラエルにも当てはまります」

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

初回登録は初月300円・1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

18,000円一括払い・1年更新

1,500円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2026年6月号

genre : エンタメ 読書