彼のような理想的な打者はもう百年は現れない
3月21日、東京ドームで行われたマリナーズ対アスレチックス戦が、イチローの現役最後の出場試合になりました。
今回の引退試合はテレビで全打席を見ましたが、やっぱり昔のよかった頃のバッティングとは違ったね。つかまえたと思った球を空振りしたり、昔だったら完璧にとらえて野手の間を抜けていただろう甘い球をファウルチップにしたり。全盛期を10としたら6ぐらいのスイングだと思いました。しかし、衰えは誰にでも来るものだからねえ。
試合後に引退会見を日本で行ったのはプロ野球の先輩として非常に嬉しかった。本来ならアメリカでまずやるのが筋だろうし、私自身もむこうでやるんじゃないかと予想していたんだよ。そこをあえて自分が生まれ育った国でやったというのは痛快だったわな。アメリカは面白くなかったと思うけど(笑)。
イチローはワールドベースボールクラシック(WBC)に2006年の第1回大会から連続で出場している。毎回いち早く日本代表への参加を表明して、他の、出場を躊躇っている日本人大リーガーに「君たちも出てこい」と出場を呼び掛けていた。あの一件を見ても、彼は非常に日本に対する強い想いがあるんだなと思っていましたよ。
日本のプロ野球には9年しかいなかったけど、小学校、中学校、高校も含め自分は日本で野球をやってきたんだ――そういう自分の国への誇りを持っていた。だからこそ、今回もまず日本で引退を報告したい気持ちになったのだと思うよ。
あれだけの成績を残した選手ですから、私が「喝」を入れるところなんて何もありません。彼の野球人生はすべてが「あっぱれ!」だ。ただ一つ、あえて何か言うとすれば、日米通算の安打記録は彼だけど、日本の安打記録は私の3085本だということだけだな(笑)。
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source : 文藝春秋 2019年5月号