イタリアの「スポーツ・ワク」って何?

第277回

塩野 七生 作家・在イタリア

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 イタリアは、国土の広さでは日本と同じくらいだが、人口となると二分の一。それでいてスポーツの国際試合ではけっこうメダルを稼いでいるんですよね。なぜだろうと思っていたのだが、最近になってわかった。その原因は、日本とイタリアの、スポーツ選手たちの育成システムのちがいにあるということが。

 日本では普通、選手の育成は私企業に託されている。有望と見た若者に対しては、企業がスポンサーになって、アメリカに送ったりして育てるというわけ。

 だが、この一見して合理的に見えるシステムにも欠点はある。私企業のおカネで育成するのだから、リターンを期待するのは当り前で、そうでないと株主たちに言いわけが立たなくなるのだから。

 また、メダル獲得有望者に限ることになるので、数も少なくなる。国際試合での日本選手の活躍を助けるとはいっても本音は、有望株への投資と同じことなのだから。

 ところが、イタリアではちがう。国際試合での自国出身の選手たちの活躍を援助するという大義名分では同じだが、そこに行くまでの経路がちがうのだ。使うのは、私企業のカネではなくて国民のカネだから、使い道も国民が納得する道でなくてはならない。

 それで、個々の選手や個々のスポーツに援助する日本式とはちがって、イタリアでは、スポーツ全体に大きく広く網を張る形になる。

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source : 文藝春秋 2026年11月号

genre : ライフ 社会 スポーツ