住井すゑ 二人を結びつけた幸徳秋水の“人間平等”

増田 れい子 ジャーナリスト

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ライフ 読書

小説『橋のない川』の作者、住井(すみい)すゑ(1902―1997)と、農民文学者・犬田卯(いぬたしげる)(1891―1957)は、大正10(1921)年、すゑが19歳のときに結婚。二男二女をもうける。昭和10年に犬田の郷里である茨城県牛久沼畔に移り住み、すゑは、病身の夫の介護と4人の子供の子育てに追われながら、執筆と農耕で一家の生活を支え続けた。昭和33年、すゑは夫の遺骨を分骨し、青山墓地内にある無名戦士の墓に納めたあと、その足で部落解放同盟を訪ね、小説『橋のない川』に着手する。次女でジャーナリストの増田(ますだ)れい子氏が母親について振り返る。※文藝春秋1998年2月号掲載

 

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 結婚生活の中で、父が健康だったのは最初の約2年。残りの36年間はほとんど持病の喘息を患っていましたから、子育てと看病に明け暮れ、生活費まで稼がなくてはならない母の苦労は、並大抵のものではなかったと思います。

 晩年、母は、どうして父と結婚したのかと人から聞かれて、“書くものを見て決めた。ウソは書けない人だと思いました”といっていたようですが、やはり父を選んだことは、母の最高のお手柄だったのではないでしょうか。

住井すゑ ©文藝春秋

 2人には、同じ人の魂が息づいていました。“大逆事件”で死刑になった幸徳秋水です。母は小学校3年のとき、天皇の暗殺を企てたという容疑で捕まった幸徳が、貧富のない世の中をつくろうとしていたと聞いて、“すばらしいじゃないか”と考え、彼の思想に深く共鳴する。一方、19歳だった父も、幸徳のファンでした。奈良の8歳の少女と、茨城の19歳の青年の中に、幸徳は同じように“人間平等”の風を吹き込み、その2人がやがて出会うのです。

 生活はギリギリでしたが、母はお金がいるなと思うと、子供を背負いながらもさっさと原稿を書き、それが懸賞に当選してちゃんと賞金をもらってくるんです。

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source : 文藝春秋 1998年2月号

genre : ライフ 読書