羽仁説子 亭主関白だった夫にスープを作りながら執筆

羽仁 進 映画監督

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教育評論家・社会運動家の羽仁説子(はにせつこ)(1903―1987)は、羽仁吉一、もと子夫妻の長女として東京に生まれる。両親の作った自由学園を卒業、記者の道に入ると同時に同学園の教師となる。戦前、戦後を通じて児童教育改革に努力し、全国幼年教育研究協議会会長。婦人民主クラブの設立などにも加わる。夫は歴史学者の羽仁五郎。彼は家の中ではあまり進歩派ではなかったといわれる。映画監督で長男の進(すすむ)氏が家庭での両親の姿を振り返る。※文藝春秋1989年9月号掲載

 

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 母は忙しいひとでした。講演でもぎりぎりにしか行かないし、終わるとさっさと帰ってきます。母を忙しくさせたのは父です。父は母の作った食事しか食べません。その準備で母には時間がなかったんです。

 桐生の素封家に育った父は、東京帝大在学中にドイツへ自費留学し、そのため食生活が洋風になっていました。父は毎日スープを飲みます。それを仕込む母は大変です。今ならスープの素がありますが、昔はそんなものはありません。

 母はよくお肉屋さんから骨をもらい、それを煮込んで特製のスープを作っていました。原稿の締め切りが迫っているときも、台所でそれを書きながら、父の食事の支度をしていました。

羽仁説子 ©文藝春秋

 父は「女性が外で仕事をするのはいいことだ」「なにも家庭ばかりが女性の能力を発揮するところではない」と理屈をいっても、母が出かけると、急に機嫌が悪くなっていました。

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source : 文藝春秋 1989年9月号

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