憲兵から「転向」したミスター日教組

日本の地下水脈 第37回

保阪 正康 昭和史研究家
ニュース 社会 昭和史 オピニオン 教育 歴史

反省なき者が戦後民主主義教育を空疎にした

 この連載の前回を振り返っておこう。日本近現代史のなかで「時代の大いなる『転向』」と呼ぶべき事態が2度あったのではないかと私は述べた。一つは、明治時代に日露戦争などを契機として国論が民権論から国権論へと変貌したこと。もう一つは、太平洋戦争敗戦を機に社会のありようが軍国主義から民主主義へと国家的に転換したことである。

 今回は後者について、何人かの人物に即して具体的に検証してみたいのだが、この「転向」が今日の私たちにも関わる重大な問題であるのは、次の5点にあると思われる。

(1)昨日まで「天皇のために戦って命を捨てよ」と神がかり的に軍国主義を喧伝していた人物が、戦後、一転して「平和と命が何より大切です」と言って民主主義の信奉者になるという、あまりにも性急な「転向」であったこと。

(2)その「転向」には時代が要請した必然性があったが、軍国主義への深い反省や、民主主義を我がものとする思索や行動がほとんどなかったこと。

(3)にわか仕立ての民主主義の牽引者は、政治、教育、メディア、学問など戦後日本社会の中枢に存在し、次世代を含めた国民の精神に強い影響を与えたこと。

(4)戦後民主主義の牽引者たちの言説は、戦時中の「非転向」を誇る共産党の神話と結びついて、戦後日本に特有の左派的な言論空間を作り上げ、これが一定の支配力を持ち続けたこと。

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source : 文藝春秋 2023年12月号

genre : ニュース 社会 昭和史 オピニオン 教育 歴史