気骨あるジャーナリストの系譜

日本の地下水脈 第35回

保阪 正康 昭和史研究家
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今こそ賊軍出身者の批評眼に学ぶときだ

 日本近現代史のなかで真に時代に対峙したジャーナリストというと誰を思い浮かべるであろうか。私の場合、指標とする幾人かの存在と仕事がすぐに想起されるのであるが、今回は彼らの残した業績を再検証してみたい。気骨ある言論人たちが歴史に刻み込んだ精神史を、地下水脈として現代につなげてみたいのである。

 というのも、現在、メディアを取り巻く状況は、大きな転換期にあるように思うからだ。これは「ジャーナリズムの危機」と言い換えることもできるのだが、当然のことながら事態の根本には、インターネットやSNSなどのデジタル媒体の席捲による新聞や雑誌などの紙媒体の衰弱がある。

保阪正康氏  ©文藝春秋

 私見によれば、今日のメディア環境は3つの視点から見ていく必要があると思う。

(1)媒体の市場縮小にともなう人々の思考の変化。
(2)情報の送り手と受け手の区分の無効化。
(3)新聞やテレビによる、客観性を持った一次報道の弱体化。

(1)は、新聞各紙の大幅な部数減、週刊誌や月刊誌などの雑誌の衰退傾向、また書籍を含めた活字文化全体の落ち込みなどによって、現代を生きる人々の意識が変化していくだろうということである。つまり、紙媒体の上の活字を目で追って読み、咀嚼し、頭で考え、それを知識化、教養化していくというプロセスは稀薄になっていくのではないか。

 これに対して、今日のようにインターネットで情報にアクセスすることが多くなると、物事に対して深々と思考せずに一時の感情だけで反応する「触覚的な感性」がますます前面に出てくる予感がある。

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source : 文藝春秋 2023年10月号

genre : ニュース 社会 メディア 昭和史 歴史