国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。
【つ】「募ったが募集せず」なぜこれで済むのだろう
前々回にも触れた「桜を見る会」をめぐる攻防では、ことばの使い方について、何かと衝撃的な実例を見ます。
とりわけ驚いたのは、首相の「募る・募集」に関する発言でした。1月28日の衆議院予算委員会で、野党議員から「(地元事務所が会の参加者を)募集していたことをいつから知っていたか」と問われ、首相はこう答えました。
「私はですね、幅広く募っているという認識でございました。募集しているという認識ではなかったものです」
議場はざわつきました。それはそうでしょう。「募る」と「募集する」は、こういう場合は同じ意味で使われます。首相はその後に「新聞等に広告を出したわけではない」と補足していますが、新聞広告を出すか、申込書を配るかにかかわらず、それは「募る」または「募集する」という動詞で呼ばれる行為です。
政治家の追及のかわし方も、ついに新たなフェーズに入ったと思いました。この答弁を批判する側も、また、「この程度の答弁で十分だ」と支持する側も、答弁自体が支離滅裂だという点では意見が一致するはずです。「主張には整合性が必要だ」という縛りが、あっけなく消滅した瞬間でした。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2020年4月号