国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。
ユーチューブで、若い人が国語辞典の説明を読み比べて批評する、という動画を見ていました。その動画では『三省堂国語辞典』の「別腹」の項目が取り上げられていました。
〈別腹〔俗〕満腹したあと、好物がもう一つのおなかにはいるように食べられること。「ケーキは―」〉(第7版)
右の説明にある「満腹する」という表現が、今ではもうあまり使わない、と指摘されました。「満腹になる」なら使うそうです。思わずびっくり。実は、この説明は私が書いたのですが、「満腹する」が古い表現と受け取られているなんて、思ってもみませんでした。
私自身は、「満腹する」は「満腹になる」と同様、ごく普通に使います。学生時代の日記にも〈蕎麦(そば)を食べ、満腹して帰る〉などと書いています。
少年時代から親しんでいる昭和文学には「満腹する」が頻出します。現代の作家でも、東野圭吾・畠中恵・森絵都の各氏が使った例を拾っています。
〈どうだ、食ったか? 満腹したか?〉(森絵都「DIVE!!」)
もっとも、さらに若い世代の作品からは、まだ例を見つけていません。おそらく使用は減っているのでしょう。
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source : 文藝春秋 2020年5月号