トランプ政権は、北朝鮮との非核化交渉での“取引”を成功させるためには、在韓米軍をある程度縮小しても構わないと考えているフシがある。
そもそも、トランプは大統領選挙戦のときから在韓米軍の撤退の必要性を示唆してきた。昨年6月のシンガポールでの米朝サミットの際には、米韓合同軍事演習の中止をマティス国防長官(当時)に相談もせずに金正恩に約束した。
ただ、文在寅政権にとって、米朝接近の動きは自らの南北融合イニシアティブには願ってもない追い風である。米朝合意が生まれ、終戦宣言、さらには平和協定が締結できれば在韓米軍の存在理由はさらに希薄になる。青瓦台にはそもそも米韓同盟の弱体化を密かに望む親北グループもいる。彼らにとってトランプは冷戦時代の「積弊の清算」の大掃除をするサンタクロースのような存在である。
トランプ政権、なかでも国家安全保障会議(NSC)やペンタゴンの中には、文政権の行方に不安を抱き、米国の東アジアにおける同盟体制を日本にピボットしようという声がある。しかし、韓国は、米国が日本の肩を持っていると感じれば感じるほど、中国寄りの姿勢を強め、日米韓の安全保障協調の枠組みから離脱していく可能性がある。韓国国内では、日米韓の防衛「不可分性(indivisibility)」を認めたがらない風潮が強いが、後方基地としての在日米軍と日米同盟が日米韓の北朝鮮に対する抑止力の基盤であり続けて来た。
日本では、韓国政府が徴用工訴訟で日本企業への強制的補償を実施した場合の韓国に対する報復や国交断交を求める声が自民党内で強まっている。「文政権とは何を話し合ってもムダ。次の政権を待つ以外にない」とのお見限りの気分が永田町を覆っている。しかし、仮に韓国の次の政権が保守系であったとしても、状況はさほど変らないだろう。
2012年8月、韓国の李明博大統領が竹島を訪問し、日韓関係は一気に悪化した。訪問に合わせて、李明博は「(天皇が)韓国を訪問したいのであれば、独立運動をして亡くなった方々に心からの謝罪をすべきだ」と発言し、日本を刺激したが、実は、彼はその前日、こんな発言もしている。
「国際社会における日本の影響力は以前のようではない」
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source : 文藝春秋 2019年4月号