遂に被害者が名乗り出た。これは「対岸の火事」ではない
「神の家」は、少なくとも3度燃えた。火元は寝室や図書室でこれといって火の気はなく、原因ははっきりしなかった。
焼け跡を写したモノクロ写真を差し出すと、初老の男は覗き込んだ。2件の火事はこの男が小学生だった1963年と1969年、もう1件の火事は2012年に起きた。焼けたのは児童養護施設「東京サレジオ学園」である。
その男、竹中勝美(62歳)が口を開いた。昂ぶると裏声になる。
「どちらも放火だと思います。火をつけたくなる者の気持ちが、私にはわかる。すべてを燃やし尽くしてしまいたくなったんだろうって」
きわどい発言だが、表情に戯れの色はない。この施設の神父に人生を狂わされたという怒りのためだ。相槌を無視する勢いで、竹中は続ける。
「燃えた場所を見てください。出火元の階上にあるのが“燃やしたい場所”だったはずです。10歳だった私が、あの男のものを握らされ続けた場所でもある」
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source : 文藝春秋 2019年3月号