国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。
【な】「なるほど」が失礼という困っちゃう意見
NHKFMの松尾貴史(まつおたかし)さんの番組に出演、2時間近くにわたって日本語談義を楽しみました。その中で松尾さんから聞かれました。「『なるほど』という相づちを目上に使うのは失礼かも、という意見が、最近ありますね」
確かに、あります。ネットなどでよく目にするようになった意見です。「なるほど」を多用する私としては、まことに困っちゃう意見でもあります。
最初に言っておくと、「なるほど」は古来、目上にも使われたことばで、失礼とは言えません。江戸時代の咄本(はなしぼん)『軽口御前(ごぜん)男』に載る艶笑小話の中で、奉行から密通の証拠があるかと問われた男が〈なるほど(=ごもっとも)、年寄りたる母が証拠でござります〉とかしこまって答える場面があります。
金田一春彦は、夏目漱石「吾輩は猫である」の登場人物の鈴木という男がしきりに「なるほど」と繰り返す場面を引用し、〈「なるほど」も日本人の愛用語のひとつと言うべきか〉と述べます(『日本人の言語表現』)。「日本人の愛用語」が失礼となると、困る人が続出するでしょう。なお、鈴木が「なるほど」を使う相手も、金田という目上の人物です。
要するに、「なるほど」は失礼でない、とはっきり擁護しておきます。その上で、ではなぜ「『なるほど』は失礼かも」という意見が出てくるのか、それについても説明しましょう。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2020年11月号
genre : ニュース