安倍晋三前首相の記者会見や質疑応答の様子から、内閣記者会は「劇団記者クラブ」などと揶揄されるようになった。
官邸や内閣記者会の常識は地方の非常識なのではないか――。
富山のローカル局「チューリップテレビ」で15年記者経験を積み、政治ドキュメンタリー映画『はりぼて』の監督を務めた五百旗頭幸男さんが、その“違和感”について綴る。
【選んだニュース】「首相会見をこじ開けろ――そして現場の記者たちの連帯が始まった」(10月15日、論座/筆者=三浦英之)
五百旗頭幸男さん
東京電力福島第一原発事故から9年が経とうとしていた3月7日。安倍首相(当時)は福島県沿岸部の被災地を訪れた。新型コロナウイルス対応をめぐり政府への批判が高まっていた時期と重なる。イメージ回復を狙う官邸。そんな思惑が透けて見える中、首相番に限定されたぶら下がり取材に一人の記者が潜り込んだ。南相馬市を拠点にする朝日新聞の三浦英之記者だ。内閣記者会に属さない彼はインナールールを無視した。あっぱれだ。ここは被災地、福島。「現場を最も良く知る取材者が、現地に来た一国の首相に視察の感想を質問するのは当然」。論座のコラム「首相会見をこじ開けろ」で三浦記者はごく当たり前のことを言っている。でも、そんな当たり前がいつから希少性を帯びるようになったのか。
安倍晋三前首相
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source : 文藝春秋 2020年12月号