福島第一原発の事故後から私の頭の一部にありつづけたのは、「廃炉」であった。
これを機に原発を全廃するか、それともエネルギー問題も安全保障と考えて、ある程度は残すかに関係なく、廃炉は避けて通れない重要課題と思ったからである。原発を全廃したからと言って、それらを廃炉にする作業まで全廃にするわけにはいかないのだから。
それで帰国中なのを利用して勉強することにしたのである。廃炉作業の統括者に会うこと、福島第一原発の現場を見ること、そしてとくに、この作業に従事している若い研究者や技術者たちに会うことを通して。
この私の願いが実現したのは、東北大学の協力があったからである。
ただし私を重要人物と見たからではなく、私の読者であった人たちが偶然にも、東北大の重要な地位に就いていたからにすぎない。
いずれにしても初日は統括者たちの話を聴き、次の日は福島原発の現場へ向った。しかも同行して説明してくれた二人は、東北大で廃炉関連の諸事業の責任者というのだから恵まれていた。
福島第一原発の事故現場をまわっているうちに、さすがの私も心が重く沈んできた。これはまあ大変な大事業だな、と思って。
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source : 文藝春秋 2019年2月号