評論家・専修大学教授の武田徹さんが、オススメの新書3冊を紹介します。
この稿が読まれる時には第46代米国大統領が決まっているはずだ。だが、現職トランプ勝利で更に加速度をつけるか、民主党が政権奪還して別方向に切ろうとする舵に抵抗する惰性として残るかの違いこそあれ、米国の現勢がその未来に影響を及ぼすことはまちがいない。そこで今回は大統領選後の米国を考えるうえで役立つ、アメリカの現在を確かに描き出す新書3冊を選んでみた。
渡辺靖『白人ナショナリズム』(中公新書)はトランプ政権の誕生以来、注目を集める機会が増えた様々な「反動」思想を取り上げる。白人至上主義活動家へのインタビューでは彼らの多くが自分は人種差別者ではないと述べ、むしろ自分たちこそが権利を行使できずに差別的扱いを受ける被害者だと信じ込んでいることが理解できる。日本でも似た構図があるが、自らを被差別者と自任する人を対抗する勢力が差別者呼ばわりしても話が通じるはずがない。こうして米国社会では分断が深まり、対話が困難を極める。
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source : 文藝春秋 2020年12月号