諸行無常とされるくらいで諸々の現象は変転しているのだから、盛者必衰もまた人間世界の「理(ことわり)」なのである。と言ってその世界に棲むしかない人間には何も打つ手はないかというと、そうとばかりも言えないところが救いになる。
個人ならば、訪れること必至の死までの歳月をどう生きるかという問題。
国家になると、これまた訪れること必至の没落までの歳月を先に延ばす、それも可能なかぎり先に延ばすには何をすればよいかということ。
前者は哲学の問題であり、後者は政治の担当になる。
この両方ともが上手く進んでいると、人々は自信を持つようになり、ゆえに他者に対しても寛容になり、その結果他国との交流も進むから経済も向上し、政治家たちにも安心して統治を託すようになる。言い換えれば、民主政が機能している状態。
ところが諸行は無常だから、個々人の努力とは関係なくても時代は変わる。それへの対応を怠ると、社会全体がギクシャクしてくる。
個人規模だと自信を失い始め、その結果経済力も劣化し始め、不安になるから他者に対して不寛容になり、自分とちがう考えには過度に神経質な反応を返すようになる。つまり、常にイライラしているので、それによる怒りを誰彼となくぶつけるようになり、怒る権利は自分のほうにあると思うようになる。他者への責任転嫁、そして次にくるのは政治不信。
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source : 文藝春秋 2018年11月号