新疆ウイグル自治区で生産される綿はムスリム系住民を強制労働させ、作ったものだから使わないとの方針を示した世界の有名アパレル企業などに対する中国国内のボイコットが続いている。アパレルのH&M(スウェーデン)やスポーツウェアのナイキ(米国)、アディダス(ドイツ)などが狙い撃ちされている。
昨年3月、オーストラリア戦略政策研究所(ASPI)が、世界のトップ企業に供給される綿などの材料や部品を製造している中国の工場で、新疆ウイグル自治区の収容施設から移送された8万人以上のウイグル人が強制的に働かされているとの報告書を発表した。その後、誕生したバイデン政権は、新疆でのムスリム系住民への人権侵害と宗教差別は「ジェノサイド」であると非難、欧米の消費者の間で「新疆綿」を使うな、との企業への圧力がさらに高まった。今年3月、EUがこのケースに「グローバル人権制裁制度」を適用し、中国に制裁を科した。それを受けてH&Mは「新疆綿」の製品を調達しないと改めて発表した。
こうした欧米諸国の「新疆綿」不買運動に対して、中国全土で「新疆綿愛国運動」という名の外貨ボイコットが始まった。
『環球時報』(4月2日)は、これらの欧米企業が「政治的カード」を切っているとし、その背後に黒幕がいると断じた。その黒幕とは米国であり、その証左としてかつてコーリン・パウエル米国務長官の首席補佐官を務めたローレンス・ウィルカーソンの発言を引っ張り出した。彼が3年前にあるセミナーで述べた次のような言葉だ。
「アフガニスタンになぜ、米軍が駐留しているかの理由の一つに、新疆には2000万のウイグル族がいることがある。米国が中国を攪乱する最も良い方法はウイグル族の人々を利用することだ。外部からではなく内部から中国を壊すことだ」
ウイグル自治区
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source : 文藝春秋 2021年7月号