合区解消、教育無償化、解散権……改憲論議の要所を突く連続インタビュー
今年は日本国憲法施行70年の節目にあたり、改憲論にも注目が集まっている。もっとも、憲法は、家電や自動車とは異なり、耐用年数があるわけではない。1789年に成立したフランス人権宣言は、いまでもそのままフランスの憲法の一部を構成している。制度変更は、必ずしも良い方向に変わるとは限らない。現在の制度が優れているならば、無理にリスクを冒す必要はないだろう。
この点、日本国憲法は国民の間に確実に定着しており、安定した民主政治の基盤となっている。例えば、憲法施行60周年の安倍晋三首相(第一次政権当時)談話でも、「国民主権と民主主義、自由主義と基本的人権の尊重及び平和主義と国際協調主義という現行憲法の基本原則は広く国民に浸透し、我が国の今日の姿を築く上で極めて大きな役割を果たしてきました」と指摘されている。
もっとも、現在の制度に「リスクを冒してまでも変える必要があるほどの不備」があるならば、手当が必要だ。すなわち、真剣な議論に値する改憲提案か否かは、「現に重大な問題が生じているか」によって判断されることになる。
こうした観点から見たとき、「日本国憲法はGHQによる押し付けで正統性がない」といった「押しつけ憲法論」は、あまりに筋が悪い。そもそも、戦後の過酷な状況下で、日本の未来について懸命に考えた政治家や官僚、そして日本国民に対して失礼だ。さらに、「押しつけだから気に入らない」というのでは、「いまの日本国憲法に内容的問題がない」と自白しているようなものである。
実りある改憲論議のためには、個別具体的な提案ごとに、その必要性を裏付ける事実があるか、濫用の危険に十分配慮されているか、憲法体系と整合するか、などを丁寧に検証せねばならない。そこで今回は、自民・公明の与党に加え、最大野党の民進、野党ながら改憲に積極的な維新の4党に絞り、各党のキーマンに話を伺った。テーマは、数ある議論の中から「現状の問題点が明確となっているか」を基準に選択し、(1)参議院の合区解消、(2)衆議院解散権の制限、(3)幼児教育から高等教育までの無償化をメインにした。
自民党 参院の合区解消を 中谷 元(党憲法改正推進本部長代理)
――中谷先生は自民党憲法改正推進本部長代理をお務めですが、自民党は5年前に新たな憲法草案全体を提案しましたね。ただ国会法を見ても、改正すべき条文を個別に発議をしていく形で進められるべきであって、草案を示して憲法の総取り換えを促すような話は現行法と整合していませんが、いかがでしょうか。
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source : 文藝春秋 2017年05月号