Amazonは21世紀のローマ帝国だ

成毛 眞 HONZ代表・元日本マイクロソフト社長
ビジネス 企業

まずは兵站線を築け──恐るべき世界戦略のすべて

Amazon物流センター ©時事通信社

 いまや「アマゾン」と聞いても、南米の大河を思い浮かべる人は少数派かもしれません。

 ネット通販の利用者なら、宅配便で届く「amazon」の箱がすぐに浮かんできそうです。本を読むのは「キンドル」、映画やドラマは「プライム・ビデオ」、オーディオブックは「オーディブル」、飲料水やトイレタリー商品の注文は「ダッシュボタン」、スマートスピーカーは「エコー」とすでに“アマゾン漬け”の日々を送っている人も多いのではないでしょうか。

 EC(電子商取引)サイトで世界最大級のアマゾン・ドット・コムは、2000年に日本語版がオープンし、現在、利用者は4000万人(日本国内)を超える規模まで広がっています。当初はオンライン書店だったのが、日用品や家電、衣料はもちろん、自動車、生鮮食品まで販売する巨大なECサイトへと発展しました。

 ここまでは一般にも広く知られた常識でしょう。ところが、アマゾンはもはや消費者にモノを売るだけの企業ではないのです。IT業界で働く人たちは、アマゾンに別のイメージを持っています。IBMやマイクロソフトも太刀打ちできない、世界最大の法人向けクラウドサービスの会社です。

 アマゾンのECサイトでは、膨大な数の商品が注文され、瞬時に決済や発送手配が処理されていきます。このシステムを支えているのが高性能のサーバーで、その数は世界で800万台を超えると推定されています。

 それらのサーバーはアマゾンによる自社開発です。CPU(中央演算処理装置)やGPU(画像処理装置)もインテルなどから購入せず、自社製とみられています。半導体からOSなどのソフトウェアまで、コンピュータにかかわる一切を自社で開発できる企業なのです。

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source : 文藝春秋 2018年11月号

genre : ビジネス 企業