ジャーナリストの大西康之さんが、世界で活躍する“破格の経営者たち”を描く人物評伝シリーズ。今月紹介するのは、ヴィタリック・ブテリン(Vitalik Buterin、プログラマー)です。
ヴィタリック・ブテリン ©TASS/アフロ
新型コロナウイルスの変異株に悩まされるインドで5月、救済基金などいくつかの非営利組織に15億ドル(約1650億円)を寄付した男がいる。ただし寄付は暗号資産(仮想通貨)の形で実施された。暗号資産の価値は変動しやすい。これだけの額を一気に換金すれば通貨としての価値が大暴落する恐れがある。
寄付を受けた基金の責任者は「思慮深い流動性を持って、時間をかけて寄付を交換する」とツイッターでコメントした。仮想通貨市場を動揺させないようにゆっくりと静かに酸素ボンベや医療機器を購入する資金に換えていくわけだ。
なんとも現代的な寄付をした男の名前はヴィタリック・ブテリン。ロシア系カナダ人のプログラマーで、ビットコインの次に有名な仮想通貨「イーサリアム」の考案者である。27歳のブテリンは、組織工学と再生医療療法の取り組みを支援する非営利団体であるメトセラ財団や、慈善団体をキュレートする非営利団体のギブウェルなどにも巨額の仮想通貨を寄付している。
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source : 文藝春秋 2021年8月号