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★副長官人事に急浮上した男
今秋の霞が関における最大の関心事は、杉田和博官房副長官(昭和41年、警察庁入庁)の後継問題だ。
7月25日、杉田氏は副長官就任から3134日を迎え、古川貞二郎氏(35年、厚生省)を抜き、在職日数の歴代最長記録を更新。本人は周囲に「政権の課題を処理し続けたら、ここまで来た。数字に興味はない」と素っ気なく語る。
後任には、岡崎浩巳元総務事務次官(51年、旧自治省)や北村滋前国家安全保障局長(55年、警察庁)、栗生俊一元警察庁長官(56年、警察庁)などの名前が取り沙汰されてきた。
ここにきて霞が関で本命視されるのが安田充元総務次官(56年、旧自治省)。
入省以来、政治資金課長や選挙部長も歴任した、自他ともに認める「選挙のプロ」。
同期のエースは財政課長をつとめた平嶋彰英氏だったが、平嶋氏は自治税務局長時代、ふるさと納税をめぐり、菅義偉官房長官に意見し、自治大学校長に左遷。自治財政局長に就いたのが安田氏だった。
「性格は温厚で敵を作るタイプではない」(総務省関係者)。杉田氏は浦和高校の先輩にあたり、総務次官時代には杉田氏のもとに足しげく通うなど覚えがめでたい。退官後はみずほ総合研究所(現みずほR&T)の顧問を務めている。
だが、何度も「もう辞める」と口にしてきた杉田氏が、菅首相に請われる形で居座るシナリオも残されているという。
杉田氏
★「主計一強」に異変
今夏の財務省人事で矢野康治氏(昭和60年、旧大蔵省)がトップの事務次官に就任し、次が茶谷栄治主計局長(61年)、その次が新川浩嗣官房長(62年)と道筋が見えた。そして、その「次」以降が面白い展開となっている。
年功序列でいえば62年の新川氏の次は昭和最後の63年組になるはずだが、トップを走ってきた阪田渉氏が財務総合政策研究所長から関税局長になり、この期は「飛ばす」年次になる気配が濃厚になってきた。
そして平成入省初の次官は誰か。今回注目を集めたのが小野平八郎総括審議官(平成元年)だ。小野氏は税制畑や金融再生委員会などを経て、直前は主税局審議官だった。
総括審議官の本命とみられてきた宇波弘貴主計局次長(同)は留任し、4年連続で同じポストという異例の人事となった。宇波氏は主に主計畑を歩んで太田充前事務次官(昭和58年)と民主党政権時代、首相秘書官― 官房長官秘書官としてコンビを組み、消費税引き上げに尽力した立役者でもある。
今回の人事は「太田氏が宇波氏を温存した」とも「矢野氏が『小野総審』を抜擢した」とも囁かれる。省内では、平成入省初の次官がどちらになるか、関心が高まるばかりだ。
もう一つ、本流の主計局で注目されるのは予算編成の司令塔となる企画担当主計官に渡邉和紀氏(平成7年)が就任したことだ。同期には大沢元一首相秘書官がいる。
企画担当主計官は古くは「事務次官確実のポスト」といわれ、昭和入省の名だたる大物次官は皆、こなしてきた。直近では寺岡光博首相秘書官(平成3年)も経験した。
渡邉氏は主税局振り出しで国際局、米州開発銀行でのワシントン勤務などを経て主計局勤めとなり、かつてのような「主計一筋」ではない。主計局出身者が要職を占めてきた旧大蔵省の構図は令和になって変わり始めている。
財務省
★デジタル庁の布陣は
9月1日発足のデジタル庁幹部の顔ぶれが見えてきた。4局体制で、局長に当たるグループ長と審議官級の次長が指揮を執る。
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source : 文藝春秋 2021年9月号