コロナ禍と演劇

巻頭随筆

吉田 智誉樹 劇団四季社長
エンタメ 社会 芸能

 劇団四季は昨年から今年にかけて、首都圏に三軒の新劇場をオープンしました。竹芝のJR東日本四季劇場[春][秋]、そして有明四季劇場です。[春]では、『アナと雪の女王』をロングランし、[秋]では来年1月まで『オペラ座の怪人』を、有明では、四季劇場[夏](大井町)のクローズに伴い、『ライオンキング』を移設して上演しています。観劇にいらした知人からは、「コロナ禍の中で新しい劇場を次々に開けるなんて、四季さんも強気ですね」という、半ば同情のニュアンスが漂うお言葉をいただくことも多く、その都度、「劇場の建設は何年も前から計画されていますので、途中でストップすることなどできません」と苦笑しながら応えています。とにかく収束を信じて前に進む他はないのですが、それでも昨年の前半には、この感染症とどう戦って良いかが分からず、途方に暮れていた時期がありました。

 そんな折、雑誌に掲載されていたある方のインタビューを目にしたのです。そこには、「アフターコロナのようなものはない。以前からあることは加速するが、これまで起こっていないことは、いずれ元に戻る」と書いてありました。この時期、政府や自治体を含め世間一般に、演劇はネット配信など映像を使った代替策を研究して、そこで生き残る方法を考えるべきだというムードが存在していたように思います。私はこれに強い違和感を抱いていたので、記事を読んで腑に落ち、煩悶していた自分の気持ちが代弁されたように感じました。

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source : 文藝春秋 2021年12月号

genre : エンタメ 社会 芸能