津川雅彦、コフィ・アナン、松村久、菅井きん、ジョエル・ロブション

蓋棺録

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 俳優・津川雅彦(つがわまさひこ)(本名・加藤雅彦)は二枚目から悪役まで多くの役を演じ、常に話題を提供して存在感を示した。

 1974(昭和49)年、まだ赤ん坊だった娘の真由子が誘拐される。妻の朝丘雪路は泣き続けたが、津川は「こうなれば体力勝負だ」と食事を口に押し込み、警察に協力して娘を取り戻すのに成功する。報道陣の前に現れたときは伸ばし放題の髭面だった。

 40年、俳優・沢村国太郎の次男として生まれる。母親は映画監督・牧野省三の娘、叔父は加東大介、叔母は沢村貞子。5歳のとき子役でデビューし、早稲田高等学院在学中に、映画『狂った果実』で石原裕次郎と共演した。

 本当は新聞記者になりたかった。しかし、俳優として活躍していた6つ年上の兄・長門裕之の勧めもあり、最後のつもりで出演したこの作品で注目される。甘い容貌に人気が沸騰し、ブロマイドが売れて長門が嫉妬したという。

 日活から松竹に移籍する際にこじれて人気も低迷したが、吉田喜重の『ろくでなし』や大島渚の『日本の夜と霧』などのヌーベル・バーグ作品に登場。テレビにも出演して芸域を広げるいっぽう、デヴィ夫人などとの「不倫の恋」を続けて悪名が先行した。

 72年に始まった『必殺』シリーズには、しばしば悪役として出演して、クセの強い演技で評判になる。「悪名も時には役に立つんです。悪役をやることで人間の二重性を演じるのが面白くなった」。

 このころ、夫と子のいた朝丘との不倫で派手に週刊誌を賑わし、叔父のマキノ雅弘が週刊誌上で「別れろ」と忠告したほどだった。73年に朝丘との結婚を決意し、手記「わが愛の終着駅」を発表して、プレーボーイの経歴にいちおうの終止符を打った。

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source : 文藝春秋 2018年10月号

genre : エンタメ 芸能