国語辞典編纂者の飯間浩明さんが“日本語のフシギ”を解き明かしていくコラムです。
【ら】「ら抜きことば」がスタンダードになる日
新型コロナウイルス関連のニュースにかき消され、あまり話題になりませんでしたが、9月下旬に「国語に関する世論調査」の結果が公表されました。文化庁が毎年度行っている調査です。
調査の目玉は「不要不急」「コロナ禍」などのコロナ関連語がどの程度定着しているかというものでした。でも、私の関心はそこにはありませんでした。私が注目したのは、報告書の後半にある「ら抜きことば」の調査結果でした。
文化庁のこの調査では、「ら抜きことば」を使うかどうかが5年ごとに質問項目に入ります。「ら抜き」の進行具合を知る手がかりになります。
たとえば、「来られます」と「来れます」はこの10年ほどはほぼ拮抗していましたが、今回は前者が約46%、後者が約52%で、「来れます」がわずかに優勢になりました。「ら抜き」の形が少しずつ勢力を広げ、本来の形の「来られます」は旗色が悪くなっています。
同様の傾向は、すでに「見られた」と「見れた」にも現れていました。当初は拮抗していましたが、前回(2015年度)の調査で「見れた」が優勢になり、今回また少し差を広げました。
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source : 文藝春秋 2021年12月号