小津安二郎 上質なユーモア

100周年記念企画「100年の100人」

中井 貴惠 俳優・エッセイスト
エンタメ 芸能 映画
日本を代表する映画監督、小津安二郎(1903~1963)。俳優、中井貴惠氏がその素顔を綴る。
中井貴恵
 
中井さん

 小津監督は父(佐田啓二)と母の仲人である。この2人の間に長女として誕生した私を監督はとても可愛がってくださった。お酒を召し上がるとたいていご自宅には帰らず我が家にお泊まりになった。宴席では当時はやっていたスーダラ節を必ず一緒に歌い踊ったものだった。ロケ帰りの監督をお迎えに行けば美味しいものを名店でごちそうになり、生まれてからたった6年のお付き合いだったのに様々な思い出が蘇る。

 両親は監督を「小津先生」と呼んだ。「先生はほんとに子供が大好きでね。私があなたを叱ったら先生が洗面所でしきりに顔洗ってるから、どうしたんですか? ってきいたらお前は鬼だ、あんな可愛い子をなんで叱るって、涙拭いてるの」。

 これは母が何度も私に聞かせてくれたエピソードだ。字が書けるようになった私は先生と文通を始めた。「きえちゃん おりこうにしていますか ぼくもあまりおさけをのまずにおりこうにしています」。「こんどえんそくにつれていってください。スーダラはしませんから」。幼子を相手にハガキからあふれだす独特のユーモア。

小津安二郎
 
小津安二郎

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!

初回登録は初月300円

月額プラン

1ヶ月更新

1,200円/月

初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。

年額プラン

10,800円一括払い・1年更新

900円/月

1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き

電子版+雑誌プラン

12,000円一括払い・1年更新

1,000円/月

※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
雑誌プランについて詳しく見る

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2022年1月号

genre : エンタメ 芸能 映画