★トヨタ2つの冷戦
豊田章男社長の「側近軍団」に内輪揉めが起きている。豊田氏がヒラ社員の頃に2回上司を務めた小林耕士副社長が側近の序列1位。現在は経理財務を統括するCFOの立場から、すべての事業に関与できる権限を得て、最高執行責任者と同等の権力を得た。
序列2位は、20年以上前から豊田氏の直属の部下として仕えてきた友山茂樹副社長。事業開発本部長など5つの部門トップを任されている。
「2人がろくに口をきかず、互いに陰で悪口を言う冷戦状態にあり、下にいる者は困っている」(グループ企業幹部)。社内では「爺やと小姓の対決」とまで言われるほど関係が悪化したのは、コスト意識や収益に対する考え方の違いが大きいと見られる。
小林氏は同社の先行きを決して楽観視しておらず、コスト管理に厳しく、「今でも鉛筆1本の使い方までうるさい」(同社社員)。一方、友山氏はIT関連の担当が長く、将来に向けての投資という大義名分の下、コストは二の次。社内では「稼いだことのない男」と揶揄されるほどで、小林氏はそういった姿勢に不満をもっている。
この争いをほくそ笑んで見ているのが序列3位の上田達郎専務。「2人が潰し合えば、いずれ自分が序列1位になれると思っている」(同社関係者)。上田氏は総務・人事本部と経営企画を担当、グループ企業を含めた人事・昇格や他社との提携戦略などを掌握している。ちなみに上田氏のクルマのナンバーは「1103」。これはトヨタの創立記念日が11月3日であるためだ。上田氏は豊田氏の側用人的な地位にあることから社内の一部で「トヨタの柳沢吉保」と呼ばれている。
いまのトヨタでは社長との距離が近くなければ出世はできない。6月14日付で経理部長から常務役員に昇格した近健太氏は一昨年まで豊田氏の秘書を務めていた。
こうした側近人事について、実父で名誉会長の章一郎氏が豊田氏を「やりすぎだ」と叱責したという。以来、父子間も、直接話をしない状態になっているそうだ。
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source : 文藝春秋 2018年09月号