★ピント外れの「こたつ記事」
「こたつ記事」とは、実にうまいことを言うものだ。足で稼ぐ取材はせず、ネットやテレビで入手した情報をまとめるだけの記事のことだそうな。
確かに、ワイドショーの司会者やコメンテーターの発言、政治家のツイッターの言葉を垂れ流すネットニュースには辟易して来たが、ここに来てその風潮に新聞も染まり始めたらしい。常見陽平・千葉商科大准教授が1月7日、朝日デジタルのコメントプラス欄に「朝日新聞はこたつ記事の量産を中止せよ!」と物々しく始まる“檄文”を載せたからである。
常見氏を憤慨させたのは、ネットメディア「Choose Life Project」が立憲民主党から資金提供を受けた事実を伏せたまま報道をしていた疑惑を巡る記事だ。「ここに掲載された情報のほとんどは立憲民主党福山哲郎氏とChoose Life Projectが出したリリース文そのままである。昨日の記事もそうだったが、報じる気があるのか?」と容赦ない。
朝日記事を確認すると、確かにピント外れも甚だしい。6日朝刊の初報はなぜか、「ジャーナリストの津田大介氏ら出演者が5日、報道倫理に反するなどとする抗議文を出した」とする。疑惑そのものよりも、朝日記者を含む出演者の「抗議」活動にニュース性を見出したとしか思えず、肝心の資金提供疑惑の中身さえその「抗議文」に頼るばかり。
翌日朝刊の続報も、疑惑の当事者のコメントを紹介して終わりだ。「メディアに資金『共感して支援』 立憲・福山前幹事長」と「メディア側謝罪」との見出しだけで、中身のスカスカぶりが分かる。
これでは「こたつ記事」と謗られない方がおかしい。報道の中立性を謳うメディアに対し政権交代を唱える野党第一党が1000万円以上の資金をつぎ込んでいたのに、怒りを覚えないのか。
だいいち、「共感して支援」との福山氏の説明を垂れ流す神経を疑う。共感すれば支援して良いという発想自体が報道の自由に思いが至らぬ鈍感さの証明ではないか。おととし、各紙の政治記事に「すばらしい!」「くず0点」などの論評を加えて張り出し、謝罪に追い込まれた国会対策委員長がいたが、共感出来るか否かでメディアを選別してよしとするこの党の独善性の変わらなさに驚く。
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source : 文藝春秋 2022年3月号