★壮絶な権力闘争
これほどまでに混乱した次官人事は例をみない。福田淳一事務次官(昭和57年、旧大蔵省入省)が辞任した財務省のトップ人事は、延長国会終了後まで持ち越され、約3カ月も次官不在の事態となった。新次官に就くのは浅川雅嗣財務官(56年)か岡本薫明(しげあき)主計局長(58年)のどちらか。
当初、麻生太郎財務相は文書改竄で批判され、「順送り人事はできない」を基本に人事を練った。最初の次官構想は自らの秘書官を務めた浅川氏か森信親(のぶちか)金融庁長官(55年)。だが森氏は財金分離の原則に反するため脱落する。最初から麻生氏の本命は「浅川次官」だった。
その後、新聞辞令で星野次彦主税局長(58年)の次官昇格が報じられたが、省内の反応は薄かった。「星野次官は当て馬」と理解されていたからだ。ところが、「浅川次官」説が有力になると、本流の巻き返しが始まる。
財務省本流にとって岡本氏は勝栄二郎元次官(50年)、故・香川俊介元次官(54年)の系譜に連なる嫡流だ。主計局には、かつて涌井洋治元主計局長(39年)が次官に昇格できず、二代続けて非本流の田波耕治氏(同)、薄井信明氏(40年)がトップに就いた苦い過去がある。「次官になれる時になっておかないと、機を逸してしまうかもしれない」(主計局中堅)と危機感があった。浅川氏に関するネガティブ情報も水面下で飛び交い、他省庁の幹部が「凄まじい権力闘争だ」と驚くほどだった。
一方で、官邸周辺からも麻生氏と浅川氏の近すぎる関係を危惧する声が出ており、「岡本次官」を後押しする。
浅川氏か岡本氏か。正式決定は7月22日以降だ。
★自信家の勘違い
金融庁次期長官は大方の予想を覆して、遠藤俊英監督局長(57年、旧大蔵省)が昇格する方向になった。
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source : 文藝春秋 2018年08月号