2022年3月4日、経済評論家の加谷珪一さんによる文藝春秋digitalウェビナー「プーチンがゲームチェンジする『世界のエネルギー経済』」が開催されました。
遡ること2月24日、ロシア軍がウクライナ侵攻を開始。ウクライナでは民間人死者が400人を超えています(3月8日時点)。ウクライナ侵攻に歯止めをかけるため、各国によるロシアに対する経済制裁が行われています。
しかし、経済制裁に備える目的でロシアは周到に中国の金融システムへの依存度を高めてきました。また、ロシアの天然ガスに依存している先進国は多いことから、世界的な資源価格の高騰が懸念されています。エネルギー問題を根本的な課題として抱えている日本への影響も例外ではありません。
「ゲームチェンジ」をたくらむロシアが攪乱する世界経済は今後どうなっていくのでしょうか。こうした“ウクライナ・ショック”をめぐる世界経済について加谷さんが解説した講義録を公開します。
《フル動画はこの記事の一番下にあります》
加谷氏
ウクライナ問題を読み解く4つの論点
ウクライナ問題は停戦協議が上手くいかず、非常に混沌としてきました。今回の一件の背後にある事情について話をしていきます。
ポイントは4つあります。1つめが「ウクライナ侵攻の背景」です。ロシアをはじめとする専制的国家は感情や思いつきで戦争をすることはほとんどありません。クラウゼヴィッツの『戦争論』に「戦争とは他の手段をもってする政治の継続である」という一節があるように今回のウクライナ侵攻の背景にも、経済問題とリンクした政治的な目的があります。
2つめが「脱炭素とロシアの思惑」です。政治的・経済的背景をさらに掘り下げると脱炭素問題が見えてきます。国家にとってエネルギーは基幹的問題です。扱いひとつで国家の成り行きが変ってしまうからです。プーチン政権がウクライナ侵攻を企てた理由の1つは脱炭素に関係すると言われています。
3つめが「経済制裁がロシアに与える影響」です。各国がロシアに対して経済制裁を行っていますが、ロシア経済が持つファンダメンタル(基礎的な要因)によって“効き目”が大きく違ってきます。
これらの議論を受けてお話しする4つめが「世界経済と日本経済がどう動くのか?」です。今回のウクライナ侵攻をきっかけに、世界経済の戦後の枠組みがガラッと大きく変わるんじゃないかと私は思っています。
”小国ロシア”は生き延びる道を模索している
世界のエネルギー事情を理解していないと、今回のウクライナ侵攻はピンと来ないかもしれません。
原油と天然ガスの両方で圧倒的な1位がアメリカです。さらにアメリカは最近までエネルギー資源を本格的に輸出しておらず、”まず我々が使うんだ”という価値観にもとづいて国家を運営してきました。アメリカから石油を買うことは難しいので、サウジアラビアやロシアといった2位・3位の国の影響力が世界の石油市場では大きかったというわけです。天然ガスも同じです。圧倒的な量の天然ガスを出しているロシアは2位です。そしてイランは3位ですが、アメリカと対立しています。
世界の石油流通はアメリカがガッチリ押さえてきました。「石油メジャー」という言葉を聞いたことのある方は大勢いらっしゃると思います。最近では影響力が薄れてきましたが、石油メジャーと呼ばれる複数のアメリカの会社が世界の石油市場をほぼコントロールしていました。さらに”世界最強”のアメリカ軍が石油の海上交通路の制海権をガッチリと握っていたのです。
他国にとっては「アメリカにエネルギー源をほぼほぼコントロールされている」ということです。石油・ドル・安全保障。これらのセットが、戦後における世界経済の大原則とされてきました。このような状況下で、ウクライナ侵攻がスタートした点を頭に入れていただきたいと思います。
では、ロシアは今どのような状況にあるのでしょうか?
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source : 文藝春秋