本当のロシアを知るために
世は「教養」ブームです。書店の店頭には、数々の教養本が並んでいます。なぜいま、教養なのか。
この書籍の題名通り、人生100年時代。仕事からリタイアしても、まだまだ長い人生が続きます。どうやって過ごそうか。とりあえずテレビの地上波を見ても、芸能人が仲間内ではしゃいでいるばかり。見るに堪えません。
そんなとき、若い頃に読むことのなかった本を読んだり、聞くことのできなかったクラシックを聴いたりしたいと思っても……、何を選べばいいかわからない。そんな迷いを持っている人たちが、教養への道標を探し求めているように思えます。そこで亀山郁夫さんです。
亀山さんといえば、ロシアの作家ドストエフスキー研究の第一人者。『カラマーゾフの兄弟』や『罪と罰』などの翻訳でも有名です。
団塊の世代にとって、前記の2冊は、若い頃、読んでいるのが当然とされていましたが、実際には読破することができず、「読んだふり」をしていた人も多かったのではないでしょうか。そんな虚栄心を恥ずかしく思っていた人たちにとって、本書は入門書として最適。そう思った人が手に取りそうです。
亀山さんは、『罪と罰』と中学3年の夏休みに出合い、読んでしまったんだそうです。そうか、その頃から読んでいないと真の教養人になれないのか……。ちょっとがっかりしますが、高校2年生で『カラマーゾフの兄弟』に挑戦したところ、「読み始めるや、挫折の連続です。ページを何度も後戻り」したというではありませんか。若い頃、挑戦して挫折した人、亀山さんでもそうだったというのは、勇気をもらえそうです。
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source : 文藝春秋 2022年6月号