「長身とくよくよ芝居」ティム・ロビンス

スターは楽し 第193回

芝山 幹郎 評論家・翻訳家
エンタメ 映画
ティム・ロビンス (1)
 
ティム・ロビンス
John Barrett/PHOTOlink/共同通信イメージズ

 ティム・ロビンスは大谷翔平よりも背が高い。大谷が193センチで、ロビンスは196センチだ。ジェフ・ゴールドブラムやヴィンス・ヴォーンよりも少し高い。大谷とのもうひとつの共通点は、大きな身体の上に小さな童顔がちょこんと載っていることだ。私がロビンスに注目したのは、『さよならゲーム』(1988)という野球映画を見たときだった。大谷はまだ生まれていない。

 映画の舞台は、ノースキャロライナ州ダラムだ。この小さな町にブルズというマイナーリーグ(トリプルA)の球団がある。ロビンスは、ブルズにやってきた若い投手ラルーシュに扮している。160キロ前後の剛速球で打者の度胆を抜く彼は「ヌーク(核兵器)」という綽名で呼ばれるが、制球力が皆無で、別の意味でも打者を震え上がらせる。

 そんな彼が、地元の女教師アニー(スーザン・サランドン)の愛人になる。野球選手が大好きな彼女は、毎年ひとり、若手を「育成」するのが趣味だ。育てられた選手は心身が整い、好成績をあげてメジャー昇格を勝ち取る。ヌークもそのひとりになるはずだったが……。

 このときのロビンスがおかしかった。野球帽の下にキューピーのようなおでこを隠し、長い手足をぎくしゃくと動かしてワイルドピッチを連発する。ベッドでも当然のように的を外しまくり、アニーを苦笑させる。

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source : 文藝春秋 2022年7月号

genre : エンタメ 映画