ジェラール・フィリップ
©AF Archive/Mary Evans Picture Library/共同通信イメージズ
2022年は、ジェラール・フィリップの生誕100年に当たる。1922年12月にカンヌで生まれた彼は(丹波哲郎やクリストファー・リーと同い年だ)、59年に36歳で早逝している。私がまだ小学生のころだった。
という時間差もあって、幼いころの私はフィリップの出演作を封切で見ていない。親の年齢に近い人々が、ダニエル・ダリューやミシェル・モルガンの名前を引き合いに出しながら彼について語るのを、なるほどあのころのスターは……という気持で聞いていた記憶がある。
60年代、私の念頭にあったフランス人映画スターは、アラン・ドロンやジャン=ポール・ベルモンドだった。あるいは、もう少し年長のジャン・ギャバンやイヴ・モンタン。彼らは、不良や義侠の徒を好んで演じた。粋でしたたかな裏社会の住人役を得意とした。フィリップとは棲む世界がやや異なる。彼の映画をさかのぼって見はじめたのは、だいぶあとになってからのことだ。
意外に背が高いのだな、というのが第一印象だった。オフビートな味やサブカルチャーの匂いがしないのは世代的に言って仕方がないが、「昔のスター」という先入観はいい意味で裏切られた。フィリップは、エゴや自己愛を前面に押し出したりしない。その一方で、繊細さや傷つきやすさを妙に強調することもない。自制心や引き技が身体に備わっているため、見はじめると後を引き、芋づる式に過去の作品をたどってしまう。侮りがたい「スター力」というべきだろうか。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から
-
1カ月プラン
新規登録は50%オフ
初月は1,200円
600円 / 月(税込)
※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。
-
オススメ
1年プラン
新規登録は50%オフ
900円 / 月
450円 / 月(税込)
初回特別価格5,400円 / 年(税込)
※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2022年8月号